幻想人迷劇 パラレルワールド(またか)
「…ハッ!?」
寝転がりながら考え事をしていたらどうやらまたあの世界に迷い込んだらしい。
「…マジか。」
とはいえ街の中心で突っ立ったままなのもアレなのでとりあえずロビーに向かう事にした。
「…あ!あの時の!」
ロビーに入った途端に元気のいい聞き覚えのある声が耳に入った。
「…ダイナモちゃん?」
「そうそう!覚えててくれたんだね!」
彼女は俺が以前ここに飛ばされた時に出会った女の子だ。多分愛用ブキはダイナモローラーテスラだろう。
「まぁね~」
「えへへ…今日もスクイックリン使うの?」
「いや、とりあえず顔だしてみただけだからこれから装備選んで来ようかなって思ってたところだよ」
「そっか!じゃあ私待ってるね!」
「え、別に先にバトルしてて大丈夫だよ?」
「いいの!私が待ちたいだけだから!」
「そ、そっか…じゃあ、装備変えてくるね?」
「うん!」
装備を選択しに来たわけだが、ふと自分の状況を見てみると、いつの間にやらランクが倍以上になっていた。一体俺の意識がない間何があったのだろう。
今回は長射程のチャージャー、3kスコープを使う。
ギアはスカッシュバンド、スタジャンロゴマシ、アケビコンフォートだ。
俗に言うゴリラというやつだろう。
そしてロビーに戻るとやはりダイナモを持った女の子がいた。
「待たせちゃったね、ごめん!」
「全然気にしてないよ!っていうか、全然時間経ってないよ!?」
「え、あ、本当だ!」
時計を見るとまだ1分程度しか経っていなかった。
「…じゃ、行こうか?」
「そうだね!」
エントランスからレギュラーマッチのロビーに入り、始まるのを待つ。その間、ダイナモちゃんと話をしていた。
「…そろそろ始まるね!行こ?」
「おう!」
ステージはネギトロ炭鉱。
味方チーム
3kスコープ(俺)
ダイナモローラーテスラ(ダイナモちゃん)
スプラシューターコラボ(男)
ボールドマーカー(男)
敵チーム
L3リールガン(男)
ラピッドブラスターデコ(男)
スプラローラー(女)
N-ZAP89(女)
ナワバリバトルが始まる。
俺はすぐに左中央に降りる高台に向かい、ダイナモちゃんはその先へ、他のふたりは右側へ向かった。
「私、イカサーの姫だねぇ…」
「そうだねぇ…」
なんて言葉を交わしつつ、俺は定位置につき防衛を始めた。
場所としては左端の敵から登れない場所にある高台だ。
ダイナモちゃんがどんどん塗っている間、敵が攻めて来たらすぐに撃ち抜いて防衛をした。
「ぐれん君、ありがと!」ナイス!
「任せろー!」
と。次の瞬間敵のローラーが上からダイナモちゃんに殴りかかってきた。
ダイナモちゃんは気付いていない様子で、俺も手を振っていた為すぐに反応できなかった。
「喰らいなさいリア充!」
そんな叫びを上げつつ降ってくるローラーが、一瞬でやられた。
「私を甘く見てもらっちゃあ困るよね」
どうやら、ダイナモちゃんがすぐに自分の獲物を振り下ろし、返り討ちにしたらしい。
反応速度といい、ダイナモをカーボン並の速さで振る腕の強さといい、もしかしたら敵に回すとやばいタイプかもしれない。
「…すげぇな」ナイス!
「えへへ~!鍛えてますから!」
どんな鍛え方したらカーボン並の速さでダイナモを振れるんですか。
向こう側を見てみると、ボールドマーカーがラピッドデコ相手に雷神ステップを使って倒しているところが目に入った。
あのボールド、神だったのか。
ダイナモちゃんが敵陣に攻め込んでいる間、ちょこちょこと攻めてくる赤ザップをひたすら撃ち抜いていた。
パリィン。そんな音がした。
「くっ!?」
突然体に力が入らなくなり、立っているのが精一杯になった。後ろからL3にポイズンボールを投げられたらしく、すぐそこまで来ているのが見えた。
「マズイ…ッ!」
身構えたが、なかなか撃ってこない。
「いやぁ、眼福だわぁ!」
突然、L3が喋り出した。
「あぁ、ごめんねぇ?君のポイズン食らってる時の顔がすっごいそそってさぁ。思わず見とれちゃったよぉ。」
「!?」
「怖がらないでいいんだよぉ?勿論その表情もイイんだけどねぇ!もっと…もっと君の色んな表情を見せておくれよぉ!」
マズイ。これは本格的にマズイやつだ。
助けてもらおうにもダイナモちゃんはまだ敵陣にいる。
「…ん?君はだぁれ?」
誰に話しかけているのか、顔を上げると、ブキを頭に突き付けられているL3の姿があった。
「うちのチームの子にそんな目で見られちゃ困るわねぇ」
ブキに触れている手をたどって見ると、味方のスシコラがいた。
この人、オネェか。
「確かにいい男だしそそるのはわかるわよ?でも、勝手に手を出しちゃだぁめ♡」ズガン!ズガン!!ズガン!!!
スシコラにあるまじき射撃音をたててL3をたおした。
「すみません、助かりました…」
「いいのよ、アタシもいい男には目がないから」
「!?…は、はい。」
そこでバトルは終わった。
結果はまたもや圧勝だった。
「いぇーい!勝った勝った!」
「おつかれー…」
「あ、ぐれん君、大丈夫だった?掘られそうだったと聞いたけど」
「!?…だ、大丈夫だよ?」
誰から聞いたんだろうか。
「そっか!ならよかった!」
「おう!」
「にしても、今日も相変わらずの活躍だったねぇ!13キルって、ナワバリバトルのキル数じゃないよ~?」
「気がついたらそんな数だったよ…」
「ひえぇ、怖いなぁ…」
「あはは、嘘嘘!ずっと防衛してただけだよ!」
「だ、だよね!」
「当たり前だよー!」
その後も小一時間話したりして、その後に別れた。
またここに来るとは思ってなかったが、次来た時には掘られないようにしないとなぁ。