紅蓮のブログだよー。

創作を気ままに置いていくブログです。

イカノイア 1話

ハクとシズクは電車に揺られている。
胸に大きな希望を抱いて、ハイカラシティへ向かっている。

そう、とうとう念願のハイカラシティへと行けるのだ。
この世に住む全てのイカが憧れるであろう大都市、ハイカラシティへ。

「いやー、楽しみだな、シズク!」
「ハク、電車の中で騒がしい。」

もう何度も繰り返したであろう会話をしていると、車窓から大きなビル群が見えてきた。

「おお、あれがハイカラシティなのかな!?」
「多分ね。...ほら、そろそろ着くよ?」
「おう!」

親から買い与えて貰った物が詰まっているバッグを持ち、駅への到着を待つ。
胸の高鳴りを抑えきれないハクを横目に、シズクは不安が募っていくのを感じていた。
人見知りな自分にここで生活が出来るのか、と。

そんな心配をよそに、電車は駅に着いた。

「さぁ、都会への一歩目だ!」
「ハク、田舎者オーラ丸出し。」

駅のホームに降り、改札を抜ける。
少し歩いて、表へ出る。
そこから見えた景色に、二人は息を飲んだ。

「ここが...ハイカラシティ!」
「思ってたよりも、ずっと凄い...」

色とりどりの看板。地元とは違う、高く、巨大な建物。街を歩くイカした市民。
目に映る全ての事柄が新しく、魅力的だった。

「すっげぇ...」
「うん...」

暫く二人は見とれていたが、やがてシズクが我に返り、最初の目的を達成すべく、ハクに話しかけた。

「...ハク、観光は後でも出来るから、今はとりあえず家を見つけよう?」
「お、おう、そうだな。不動産屋に行くか!」

二人は手に持っていたパンフレットやガイドをアテに、不動産屋へ向かった。

「いらっしゃいませ。新しいお住まいをお探しですか?」
「はい。つい先程こちらに来たもので、まずは帰る場所を確保しようかと。」
「良い心掛けですね。お客様方はご兄妹ですか?」
「いえ、幼馴染みです。」
「では別居ということでよろしいでしょうか?」
「あぁ...シズク、どうする?」

ハクは1人でシズクが大丈夫か心配になったのでとりあえずシズクに聞いて見ることにした。
重度の人見知りであるシズクが一人暮らしはキツイのではないか、と判断したからだ。

シズクは思った。
確かに一人暮らしは不安だったので同居した方が安心だと思う。
だが、それを今ここで同居すると言った場合、この不動産屋にはどう思われるだろうか。間違いなくよからぬ方へ勘違いされるだろう。
しかし、背に腹は代えられないので、シズクは仕方なく―

「...同居でお願いします...」

こう言うしかなかった。

「か、かしこまりました。現在なるべく安くご提供出来る良い物件が丁度ありますので、そちらへ下見に行きますか?」
「あ、お願いします。」

そして下見を終わらせ、契約を済ませた二人は安いにも関わらず広く、特に訳ありでもないとても良い場所へ荷物を移した。

「よいしょ、っと...。これで大きい物は終わりか?」
「うん、これで終わり。...ってか、よくこれだけの量を1人で持ってこれたね...普通2人がかりとかで運ぶものだよね...?」
「まぁ...鍛えてますから...?」

シズクが驚くのも無理はない。なぜなら、冷蔵庫やテレビ、タンスにベッドなど生活に必要な物を全て1人で余裕の表情で運びきったからだ。

「よし!ひとまず休憩しよう!」
「お疲れ様。はい、これお茶。」
「おお、ありがとう!」

シズクは思った。
なんだかんだで、上手くやって行けそうだ、と。