幻想人迷劇 その弐拾肆
魔法の森を出て氷の妖精のいる湖へ。
湖を越え、遂に見えてきた。
目的地は吸血鬼の棲む紅い舘、紅魔館。
もっと正確に言うのならば、紅魔館の、地下室。
「さて…。うん。やっぱり寝てるよね…って、えぇ…」
紅魔館の門番、紅美鈴さんはいつも寝てると聞いてはいた。前回ここに来た時も確か寝ていた。
だが、その時とは明らかに変わっている。
…ベッドを置いて寝ている。
「咲也さんが置いたか、自分で置いたかだろうけど…」
「あら、また来たのね。今度は何の用なのかしら?」
突如、背後から声が聞こえた。この声は前にも聞いたことがある。
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんだ。
「あ、おはようございます、咲也さん。今日はですね、妹様と遊んでみたいな、と思いまして来ました。」
「…あなた正気?妹様がどんな性格なのか、知らない訳ないわよね?」
「ええ、存じております。その上での交渉です。」
「…まぁ、この前のあなた達の弾幕戦を見させてもらったからあなたの強さはわかっているけれど…」
どうやって見てたんだろう。後で文さんの所に聞きに行ってみるか。
「……仕方ないわね。いい?命の危険を感じたらすぐに退くのよ。」
「心得ております。」
「そう。じゃ、案内するわね。」
「あれ、咲也さん忙しく無いんですか?」
「今はお嬢様が寝てるからそこまで大変じゃないわ。まぁ忙しくてもちょくちょく時を止めて仕事しつつ案内するわよ。」
「へぇ…」
「…そういえば。」
「どうしたの?」
「美鈴さん凄く安眠してませんでした?」
「あぁ、あのベッドは私が置いたのよ」
「…まじすか…」
「さて、着いたわよ、この扉の向こうは妹様の部屋。覚悟は出来てるわね?」
「勿論です!」
「そう。じゃあ、私は戻るわね。健闘を祈るわ。」
「はい、ありがとうございました」
さて、とうとう来てしまったわけだが…
「流石に開けたら即スペカはないよね…」
扉を開けた。
禁忌「クランベリートラップ」
開けた瞬間、赤と青の大小の弾幕が展開される。
「やっぱフラグだったのかよ…っ!?」
すぐに箒に跨り弾幕を避け始める。
やがて弾幕が収まって、止まった。
「アハハハハッ!!貴方。私と遊んでくれるのね?いいわ!ずっとずっとずぅぅっと、遊び続けましょう!?」
アカン。これはやばい方のフランちゃんだった。ちょっとお兄様とか言ってくれるかなとか思ってた前の俺を殴りたい。
「ええ、妹様と遊びに来たんですよ」
禁忌「レーヴァテイン」
炎の剣が、いや、大剣が現れる。
フランちゃんがこっちに突っ込んで来る。
しばらくは避け続けてみよう。
「ザ・ワールド」
時を止め、寸前でフランちゃんを避ける。
時を戻す。
すると、自分のいた場所がレーヴァテインによって1秒間に何千回ものスピードで切り裂かれた。
これは意地でも喰らえないスペルだな…
「貴方、なかなかやるのね!愉しくなってきたわ!」
「嬉しそうで何よりですよ、妹様。」
こっちは恐怖と少しの期待位しか無いんだけどね…