幻想人迷劇 その弐拾
永遠亭の廊下を進み、一つの部屋についた。
ここに、直視しがたい程にボロボロにされていたにとりさんが運ばれ、治療されて。
そして今、目を覚ました。
「ひゅい…?ここは…?」
「永遠亭よ。そこの少年君が貴女を運んでくれたのよ?」
そう言って自分に向かって指をさす。
「え、紅蓮、君がかい?それは迷惑をかけたね…」
「いえ、全然気にしなくていいですよ?それよりも、体は大丈夫なんですか?」
「ん…どうやら、大丈夫みたいだ。私が妖怪だから、ってのもあると思うが、どうやら月の頭脳の名は伊達じゃないみたいだね?」
「あら、私は特に何もしてないわよ?」
バタン!と勢い良く戸を開ける音がして、一人の妖怪少女が入ってくる。
「ええ、確かに《お師匠様》はほとんど何もしてなかったです。ずっと私に任せっきりでしたから」
入ってきたその一瞬でわかったが、やはりこの少女は、鈴仙・優曇華院・イナバだった。
「酷いわね優曇華、任せっきりだなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。わたしは暇そうだった優曇華に仕事を振ってあげただけで」
この話は長くなったのでしばらくの間自分と妹紅さんとにとりさんでしりとりをしていた。
〜小一時間後〜
「誠に申し訳ございませんでしたお師匠様」
「よろしい」
「えーと、にとりさんにお聞きしたい事があるんですが、いいですかね?」
「あぁ、いいけど、どうしたんだい、そんな真剣な顔して。」
「にとりさん、誰にやられたんです?」
真っ先に確認したい事だった。にとりさんをあんなにズタボロにした奴を自分は許せない。だから犯人を知りたかったのだ。
「…。」
「にとりさん、お願いです。誰にやられたのか、なんでそうなったのか教えてください。」
「…わかった。話そう。」
このやりとりが終わる頃にはもう皆がこの話に食いついていた。
「私は…早苗にやられたんだよ。」
「早苗さんに、ですか!?」
鈴仙さんが驚愕の表情で確認する。
「あぁ、間違いなく早苗だったよ。」
「なんでそうなったんだ?」
「早苗が急に私の家に来てね。なんかその技術は神に反抗するものだー、とか言って急にやられたんだ。」
正直、自分も驚きを隠せなかった。
早苗さんとは会ったことは無いはずだが、そんな事をする人では無い。
だが、被害者本人が言うのだから間違いなく早苗さんが、にとりさんを。
「…わかりました。有難うございますね、にとりさん。」
「あ、おい、どこに行くんだよ紅蓮!?」
「ちょっとコンビニ行ってきます」
「幻想郷にコンビニなんてないわよ、何言ってるのあんたは」
「いいわよ鈴仙。そのまま行かせてやりなさい。」
「…有難うございます」
そうして自分は永遠亭を後にした。
迷いの竹林を抜ける。正確には、竹を燃やして強制的に道を開けて進んだ。いつの間にか夜になっていたらしい。
「…明日にするか」
魔法の森にある自分の家へ帰る。
明日、妖怪の山を《観光》しに行こう。