紅蓮のブログだよー。

創作を気ままに置いていくブログです。

こんな非日常は望んでない 一話

自分で言うのも変だが、俺はどこにでもいる高校生だ。
…まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったんだ---



~数日前~

「よーし、帰りのホームルーム始めるぞー、席に着けー」

ある夏の日。
クラスの担任がいつものように号令を掛けさせる。

「起立、礼」

そして日直の生徒が号令を掛け、ホームルームが始まる。
いつも通りの風景だ。いつも通り過ぎて欠伸が出る。

某高校の男子高校生である俺、燎月蒼魔(りょうげつ そうま)はそんないつも通りの生活を送っていた。
朝起きて、身支度をして、学校へ行き、退屈な授業を受け、家に帰り、夕飯を食べ、湯船に浸かり、寝る。

何度繰り返したかもわからないルーティーンを重ねるうちに、非日常に少しの憧れを持つようになるのは、男子高校生としては仕方ない事なのだと思う。
例えば普通の男子高校生なら、芸能人が学校へ来るとか。多少二次元に染まっている男子高校生なら、可愛い女の子が転校してくるとか。
そんな非日常を少なからず望むのは、現実が退屈だと感じているからなのだろう。

…まぁ、俺の場合は名前から既に軽く非日常なのだが。こんな名前を付けた親を軽く恨めしく思う。

とにかく、だ。そんな非日常を望みながらも、今日も普通の日常が終わると思っていた。
だが、今日は少し違った。

「あー、燎月。お前宛に手紙がある。お国からの手紙のようだが…」
「…あ、ありがとうございます。」

国から手紙が来る、という異例の出来事に思わず心が躍り出しそうだったが、必死に自制し平静を装いつつ手紙を受け取った。

その後は、まぁ、いつものホームルームだった。


「ただいま」
「おかえりー」

その後、帰り道でも特に何もなく家まで帰ってこれた。
食事と入浴を済ませ、担任から受け取った国からの手紙とやらを開いてみる。

「えーと…」

"燎月 蒼魔殿"
"貴殿に重要な話がある。7月29日の15時に、下記の場所まで来て頂きたい。"

「…は?」


~7月29日~

「…で、頑張って来たわけだけど…何処だここ。地図に載ってなかったぞ…?」

雲一つ無い晴天の日に長旅をさせられたので軽く不機嫌になりつつ、待ち合わせ場所となっている、”青蘭学園の校門前”まで歩き出す。


少し歩いた先に、一人の男性が立っていた。どうやらあの人に話し掛ければ良いようだ。

「あの、ここに呼ばれた燎月という者ですが…」
「おお、来てくれたか!長旅ご苦労様だった!さぁ、私に着いてきてくれ」

言われるがままに着いていき、青蘭学園とやらの応接間に迎え入れられた。

「いきなり呼び出してすまないね。私はこの学園の教頭だ。よろしく頼む。」
「あ、はい。燎月蒼魔です。よろしくお願いします。」
「はっはっは、そう畏まらなくて大丈夫だよ」

いきなり呼び出されて見知らぬ人に案内されて畏まらないというか、警戒しない人の方が珍しいと思うが…

「で、君を呼んだ理由だが…君は、何か特殊能力のようなものを見たことがあるかい?」
「見たことは…ないですね」
「では、そのようなものが実在すると思うかい?」
「…思わないです。現実の世界では、無いと思っています」
「実在する、といって、信じてくれるかね?」
「…まぁ、ここが地図に載っていないことや、様々な事を考慮して、信じるに値すると思います」
「そうか。では、君にその特殊な能力がある、といって信じてくれるかね?」
「それは…信じ難いです。今までそのような事は無かったので」
「ふむ。…突然で申し訳ないが、場所を変えようか」


そう言って、教頭らしい人は俺を屋上まで連れて行った。

「”力を解放する”ようなイメージで、力んでみてくれ」
「…はぁ」

騙されたと思って、言われた通りに力を入れてみる。

すると、俺の周囲に風圧が発生し、いつの間にか左手に赤、右手に青のガントレットが装着された。

「…!?こ、これは?」
「後は自分自身の感覚で力が使えるだろう」

両手を前に突き出し、また力を込めてみる。
すると左手からは炎、右手からは氷が前に放出された。

「おめでとう。それが君の特殊能力、"エクシード"だ。」